歯のブリッジとはどんなもの?
治療による抜歯や事故などで完全に歯を失った場合、いくつかの治療法があります。
その中のひとつ「歯のブリッジ」とは、抜けてしまった歯を補うため、連結した被せ物の人工歯を両隣の歯に橋のように渡して入れる一般的な治療法。
本数や位置などいくつかの条件を満たせば保険が適用され、比較的安価で短期間での治療が可能ですが、他の治療法と同じく一長一短です。
ここでは具体的なメリットとデメリット、治療の手順や費用などを他の治療法も含め解説していきます。
歯のブリッジのメリットとデメリットとは?
メリット1:白い歯を入れられ、見た目が自然
また保険診療でも、前から3番目までの歯であれば内側にのみ銀色の金属が使われ、白い歯を入れることができるので人目につきにくいでしょう。保険適用の奥歯の場合は銀色の被せ物を使いますが、自由診療では奥歯も白い歯を使うことが可能です。
選ぶブリッジ素材によっては変色のないものもあり、目立ちにくく美しく治療することができます。
メリット2:食感を保ち、自歯と同じような感覚でいられる
両隣の生きた自分の歯を土台にしているので、人工の歯でも自然な噛み心地で硬さを感じることができるそう。食感は食事を楽しむ上で大変重要です。
インプラントや部分入れ歯の場合は骨や歯茎で噛む力を受け止めるので、また違った噛み心地になってしまうとか。
メリット3:治療が終わるまでが早い
他の治療法の場合は4回以上の通院、期間も数ヶ月から1年ほどかかる場合もあることを思うと、早く治療が終わることは大きなメリットです。
メリット4:ズレなどがなく固定がきっちりしている
ですがブリッジの場合は歯科用の強固な接着剤で固定するので、ズレることはありません。
強い力がかかっても外れる心配がないので、硬いものも安心して食べられます。
メリット5:保険適用内もあり費用が比較的安い
これに検査料や両隣の歯の治療費を加えても2万円から3万5千円前後で治療することができます。
インプラントの相場が30万円から45万円なことを考えると、非常に安価と言えるでしょう。
デメリット1:周りの健康な歯を削る必要がある
一度削った歯は2度と元には戻らず、歯の寿命は短くなってしまいますから、慎重に考える必要があります。あとで紹介しますが、歯を削らないウェルデンツのようなブリッジもあります。
デメリット2:土台の歯の状態が悪いとできない
そもそも土台となる歯がなければ基本的にはできません。奥歯が抜けた場合など、手前の2本を土台にする特殊な延長ブリッジという方法もありますが、手前2本の歯への負担が大きくあまりすすめられないことが多いでしょう。土台となる両隣の歯があったとしても、1本が健康で1本が歯周病でぐらついている場合などは歯の揺れが異なるためトラブルになりやすいと言えます。
接着剤が溶け出して隙間から虫歯になってしまうことも。
デメリット3:歯のない箇所の骨がやせていくリスクがある
ブリッジをしてもこの「骨吸収」は起こり、顎の骨が非常に薄くなることがあります。
デメリット4:歯が割れるリスクがある
失った歯が負担するべき力を両隣で支えるため、歯が割れてしまうことが。割れてしまうと抜歯せざるを得ません。特に神経を抜いた歯は強度が劣るため、割れるリスクが高くなります。
デメリット5:食べかすが詰まり口の中が不衛生になることがある
歯ブラシも入りにくい上通常の歯間ブラシが使用できないため、不衛生になりがち。適切なケアとメンテナンスが必要です。
歯のブリッジの種類や費用、保険適用について
メリットの項目でも費用の安さをご紹介しました。保険適用の条件と、さまざまなブリッジの種類や費用を見ていきましょう。
前歯の場合犬歯を含む2本以内の欠損、または犬歯を含まない4本以内の欠損、奥歯であれば前から4番目以降で1〜2本の欠損であれば、支台となる歯の状態などの条件が当てはまり保険適用診療となります。
自費の場合は、使用する素材によって価格が大きく異なり、欠損歯1本あたり約5万円から15万円。
現在、歯科治療では保険診療と自費診療を混ぜた「混合治療」は禁止されているため、検査や両隣の歯の治療費なども全て自費になり、治療の合計は46万円から51万円程度です。
■保険適用内の前歯のブリッジ
前から3番目までの前歯であれば、金属の本体に白い硬質レジンをかぶせた白い人工歯「硬質レジン前装冠(ぜんそうかん)」が使用できます。
内側には銀色の金属が見えますが、普段の生活で人目につくことはあまりないでしょう。時間が経つにつれ、プラスチックの変色や、金属の成分が歯茎に浸透することで黒くなることがあります。《費用・保険適用》
・診断料 : 3,000円前後
・処置費用 : 5,000円程度
・人工歯費用 : 2万円前後
・処置後のメンテナンス費用 : 1,000円から3,000円前後(半年に1度程度)
■保険適用内の奥歯のブリッジ
保険適用内の奥歯のブリッジは、銀色の金属冠(銀歯)が使われます。金属の劣化が起きることも。《費用・保険適用》
・診断料 : 3,000円前後
・処置費用 : 5,000円程度
・人工歯費用 : 1万円前後
・処置後のメンテナンス費用 : 1,000円から3,000円前後(半年に1度程度)
■セラミックブリッジ
セラミックブリッジには、オールセラミック、ハイブリッドセラミック、メタルボンドがあります。最も天然の歯に近い素材で審美的に現在最も優れているといわれるのは、オールセラミック。
金属を一切使用していないので歯茎の黒ずみが起きず、変色もしにくいのが特徴です。
ただし強度に欠け、噛み合わせ次第で割れてしまう可能性もあるため奥歯への使用は向いていません。レジンを配合したハイブリッドセラミックは天然の歯程度の強度を持っていますが、プラスチックなので、天然の歯のように磨り減りやすい材質です。
こちらにも金属は使われていません。メタルボンド(メタルセラミック)は、金属製のフレームにセラミックを焼き付けており、金属の強度とセラミックの美しさをあわせ持った素材です。《費用・保険適用》
・診断料 : 3万円前後
・処置費用 : 約5万円から12万円程度(1本)
・人工歯費用(1本) : 約5万円(ハイブリッドセラミック)、約8万円から10万円(メタルボンド)、 約12万円(オールセラミック)前後
・処置後のメンテナンス費用 : 5,000円から1万円前後(3〜4ヶ月に1度程度)
■歯を削らない接着ブリッジ
歯を削ることなく装着できる以下のような接着ブリッジもあります。噛み合わせなどによってできない場合や、強度が低いため食事の際に注意が必要ですが、健康な歯を削る必要がないのは魅力的でしょう。・ウェルデンツ
近年開発された、ポリプロピレンを主成分とする新しい歯科材料。バネ部分も色が白く目立たず、弾力性と強度があり軽量。毎日外して洗う必要がある。・ファイバー固定ブリッジ
特殊なファイバーテープのついた人工歯を両隣の歯に接着する。噛み合わせの力でテープが外れる可能性があるため奥歯には使用できない。・ヒューマンブリッジ
両隣の歯をほとんど削ることなく取り付けられる。エナメル質を残すことができ虫歯になりにくい。この3つがありますが、現在行っている歯科医院は限られ、まだ一般的な治療とは言えません。《費用・保険適用の場合もある》前歯は保険が適用されます。自費の場合総費用30万円前後ですが、治療を受けられる医院が限定されることもあり、事前に問い合わせることをお勧めします。
■ロングブリッジ
2本以上の歯を失っている場合は、隣接する2本の歯で4本分以上の歯を支えることになります。土台となる歯には大きな負担がかかるため、歯が割れ抜歯することになる可能性も。
失った歯が多ければ多いほど土台の歯の負担は大きくなるので、ブリッジ以外の治療法が適していることもあります。《費用・保険適用の場合もある》
連続して2本まで、前歯の欠損の場合は連続して4本までが、その他の条件と合わせて保険適用になる可能性があります。
自費の場合、使用する素材などによって価格は異なりますが、ブリッジ本数が増えることもあり35万円から50万円程度でしょう。
歯のブリッジってどうやるの?基本治療法とその手順
1、まだ歯が残っているなら抜歯、仮歯を入れる
2、歯茎が元にもどるまで2~3ヶ月待つ
ですが歯茎の食い込みなどを避けるため、骨の状態が戻ってからブリッジの型を取るので2〜3ヶ月待ちます。
3、ブリッジの土台となる歯の治療
そのため、ブリッジをつける土台となる歯をしっかりと事前に健康な状態にしておく必要があります。
4、土台の補強と補正
欠損した歯の分を土台の歯が支えるため、通常の1.5倍の力がかかり、奥歯の圧力は約90kgにもなります。土台の歯が割れてしまうとさらなる抜歯につながるため、事前にグラスファイバーの芯と強化プラスチックを使って補強します。
それから3つの歯をつなげるため、両隣の歯を平行になるように形を整えていきます。
5、ブリッジの歯型を取り模型を作る
6、最終調整・・・ブリッジを歯につける
歯のブリッジの寿命とお手入れの方法
そして長持ちさせるにはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
歯のブリッジの寿命とは?
ブリッジの寿命は、素材やそれぞれの口内環境などによって全く異なりますが、一般的に、7〜8年といわれます。10年後にも使えている確率は50%〜70%。正しいケアを行わなかったため1年でダメになることもあれば、40年もずっと使い続けられることもありますので、あくまで目安として考えましょう。
素材によっても異なり、保険治療に用いられる金属製のブリッジはセラミックに比べて劣化しやすいため、寿命は短くなります。
3つのお手入れ方法
ブリッジを長く使っていくためには、適切なケアが必須。これら3つの方法があるので、歯科医院できちんと指導を受けましょう。
◆歯間ブラシ
ブリッジの根元の汚れを落とすための歯間ブラシ。通常の歯と異なり、3本以上の歯がつながっているブリッジはデンタルフロスを通すことができないのです。
根元は虫歯や歯周病が進行しやすいので、この歯間ブラシを細かく出し入れしてしっかり汚れを落とす必要があります。


◆スーパーフロス
デンタルフロスにスポンジがついた用具。先が硬いので隙間に入れることが簡単で、歯が欠損した箇所にたまりやすい汚れを掻き出し、口臭予防にもなります。
◆タフトブラシ
毛先が小さくまとまった歯ブラシ。隙間やくぼみまで磨くことができるものです。
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ブリッジをすすめられたけど、他にも治療法はあるの?
治療法1:インプラント
周りの歯を傷つけず、欠損歯が多くても治療が可能です。1本30万円から45万円程度の費用がかかりますが、正しいケアを行うことで20年以上持つといわれるもの。
ただし手術の必要があるため、糖尿病や重度の骨粗鬆症を患っている場合は選択できないこともあります。
治療法2:部分入れ歯
また保険治療であれば1万円程度、自費では15万円から30万円程度ですが、金具が目立ってしまうことと、口の中で動くため違和感が強いのがデメリットでしょう。
治療法3:スマイルデンチャー
隣り合う歯を削ることなく治療ができますが、噛む力が20%〜30%まで落ちてしまいます。また保険適用外になり費用は9万円から30万円程度です。
治療法4:歯の移植
本来の自分の歯を最後まで生かしきれる治療法ですが、ほとんどの医院で自費治療の対象となっているため5万円から15万円程度です。
歯が抜けたまま放置しちゃだめ?その後顔面崩壊も・・・
すると歯周病や虫歯、知覚過敏などになりやすくなってしまうのです。さらに噛み合わせがずれ顎関節症や胃腸への負担の増加も考えられます。また歯が抜けた部分は唇や頬のハリが失われ、老けた顔つきになったり顔の輪郭や形が崩れたりという見た目にも関わってきます。放置するのは非常にリスクが高いと言えるでしょう。
歯科医にしっかり相談して納得のいく治療を
歯のブリッジ治療と一口に言っても、さまざまな種類や素材があり、それぞれにメリットデメリットがあります。保険治療か否かで費用も大きく異なり、丁寧なケアで寿命を延ばすことができれば、費用がかかっても長い目で見ればリーズナブルということも。
インプラントなど他の治療法も視野に入れつつ、信頼できる歯医者さんに納得がいくまで相談してください。小さな歯1本が体全体に影響を与えることもあります。あなたの歯にぴったりの治療法を見つけましょう。
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