いっそ”魔性の女”と呼ばれたい【齋藤薫】

いっそ”魔性の女”と呼ばれたい【齋藤薫】

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 今月のテーマは"いっそ”魔性の女”と呼ばれたい”について。毎月第2水曜日更新。

女力と人間力、それが大物キラーの魔性を作る

仮に、"魔性の女"と呼ばれたら、あなたは嬉しいだろうか? それとも不愉快だろうか? 嫌だけど、なんだかちょっと嬉しい……そういう複雑な思いをもたらすのが、〝魔性〞という響きだから。 

モニカ・ベルッチ、スカーレット・ヨハンソン、アンバー・ハード……”魔性の女”役がハマる女優たちは、皆美しいけれど、ただビジュアルにおける共通点はあまり多くない。邦画史に残る”魔性の女”、『白夜行』のヒロインを演じたのは、清純派の代表である堀北真希だった。一見してセクシーだとか、いかにも妖しげだとか、そういうことではない、むしろとらえどころのなさが、"魔性の女"の身上。言い換えれば、その女がなぜ人を魅了し、引き込み、虜にするのか、明快な理由がないからこそ、魔性なのだ。

最近も、2人の"魔性の女"についての報道が過熱した。一人は、IT長者と破局した紗栄子さん。もったいないとの声がたくさん聞かれる一方、大物ばかりを落とす魔性の女は、やっぱり別れ方も魔性だ。一体何が起きたのか知らないが、超大豪邸にともに住む計画も明かしているくらいだったのに、あそこで後腐れもなく、すっきりと別れられる潔さも、そのエネルギーも、"魔性"のひとつの特徴なのだ。常人には理解できない判断をし、サラリと行動に移せることが。 

紗栄子さんが、なぜそんな大物モテするのか?には諸説あるけれど、やはり大物を大物扱いしない度胸、思ったことをポンと言うのに、説得力をもてる心の強さと頭の回転の速さ、しかしそういうものとは裏腹に小動物のようなか弱さと愛らしさがある、そのギャップが、男性にとっては極めて魅惑的なのだろう。ただそういう二面性は、確かに”魔性”の条件だけれど、この人の場合はそれ以上に、人として"やり手"であることは間違いなく、魔性だけで片付けてはいけない。 

ビジネスも成功していて、インスタもつねに話題、360度に濃厚に取り組んでいく典型的なタイプで、大物との関わりも、そうした人間力で取りつけた。大物から大物へ、といっても男のタイプを問わないのは、この人が人一倍自我が強い上に人に対しても熱いことを示している。ここでふと思い出されるのは、工藤静香さんがキムタクの前はYOSHIKIと交際していたこと。これはこれでスゴい。両極にある王子系、いや王様系の男を夢中にさせるのにはやはり魔力に近いものを感じるが、それこそ確固たる自分を持っていないとあの2人は落とせない。にもかかわらず人に熱く、"尽くす"のではなく"きめ細かい"。巧みに緻密に人と関わる女性であるとはよく言われること。つまりこの人もやっぱり、やり手。”画家”でもあるという厚みも含めた人間力の強さに反して、華奢なあたりもよく似てる。不思議な引力の持ち主なのは確かなのだ。 

だから魔性という曖昧な言葉ですまさず、この人たちにはちゃんと学ぶべき。女力と人間力、ともに強いと、女は魔性を噂されるほど強大になるということも。

魔性の女は、いけないことをしてもなぜ許されてしまうのか?

でも、"魔性"の定義は一つじゃない。もう一人、5代ながら改めて魔性の女と呼ばれたのが、斉藤由貴さん。奇跡の5代と言われるほど、若くて美しいことも手伝っての命名だけれど、今や有名人にとっては致命傷となる不倫騒動で、逆に何かハクをつけてしまった形。 

今回が3度目となる不倫騒動で、いわゆる不倫体質であることは明らかになったが、それ自体よりもむしろ、釈明会見での対応の方が注目され、そして”魔性の女”は、いけないことをしても世間が許してしまう、そういう魔力を持っているのだということを物語った。 じゃあなぜ許されるの? 

その釈明会見は、何も準備せずに、取るものも取りあえずやってきて、構えることなく、あまり取り繕うこともなく、淡々と説明を行った。そう、釈明ではなく独白を。不倫なのに、質問にほぼ答えようとする無防備さが、むしろ好感度を上げたりした。記憶にないというコメントもはさみながら、私のそういうところが甘いんですよねーとか、彼に好意はあったとか、一瞬甘えたくなっちゃったりして、みたいに、友達に話すように記者会見で話してしまえるのは、鈍感なのか、ただの正直者なのか、それともエモーショナルなのか。 

いやおそらくは、それらの要素が絶妙なバランスで組み合わさっているからこそ、傍観者たちを多少ともふわふわ寛大にさせたのかも。不倫会見でファンを増やすなど前代未聞だけれど、これが魔性なのだ。なんだかこういう魔性ならちょっと持ってみたいと思わないか?! この人の場合は、自らが作る独特な空気の中に、いつの間にか相手を取り込み捕まえてしまう。本人には全く自覚がなくても、相手を捕まえている。独特な空気を作っているのは、このまったりとしたアンニュイな所作。表情豊かじゃない分、相手の目の奥を少し上目遣いでまっすぐ見詰める大きな目。そして、ゆっくりゆったりふわっと話す話し方。それらが醸し出す空気なのだ。これはとても重要なファクターで、空気が作れないと、雰囲気を持てず、人も取り込めない。存在感も放てない。この人のように、そこにいる大多数を真綿で優しく包むような空気を作ること、そういう才能があるかどうかで女の運命は大きく変わるのだ。

いみじくもこの人は過去の不倫会見で、「みんな、素敵に見えちゃう」と言った。みんな一緒くたはまずいが、結局こういう女がモテるのだ。ふわっとした空気の中に取り込まれ、素敵と思われる……それはある種の至福で、相手がこの人を好きにならないわけがない。ふんわりと、でもまっすぐに、相手に集中する。この絶妙な力加減が、この人の魔力。 

さらに重要なのが、実は同性からも魅力的に見える全方位性。男も女もない、みんなを素敵と思うタイプは、基本誰にも敵意を持たない、持たれない。ふんわりまっすぐ、女の人のことも好きになる。その感じが、結果何でも許されてしまう理由だろう。それも、魔性の女は良くも悪くも自分が強く、人と比較もしないし、そもそもあまり自分がどう見られているか頓着していない。そういう意味では極めて強い心の持ち主。そうでないと、この雰囲気は醸し出せないのだ。 

正直、後付けで魔性を身に付けるのは難しい。でも彼女たちが人の心をつかむツボのようなものは、知っておきたいのだ。紗栄子さん系の魔性にも、また斉藤由貴さん系の魔性にも共通するもの……。それは、相手と会ったこと、一緒にいる時間を心から喜べること。相手への集中力が人並み外れている。片や人間力、片や空気感と手段は異なるが、どちらもポジティブなパワーだからこそ人を魅了する力が、半端ではないのだ。結局のところ魔性も、一人じゃ何もできない。相手があっての魔性。だからこそ、魔性は美しさに宿るものではない、その引力に宿るものなのだ。誰かと会ったとき、一生懸命相手に集中する。ただ自分を強く持っているから、さよならと別れた瞬間、自分の世界に戻って、その関係性には執着しない。その潔さもまた”魔性”なのだ。まずはここから始めてみたい。ふんわり、まっすぐ、人に集中する!

【斎藤薫の美容自身 STAGE2】まとめ記事はこちら
齋藤薫 美の格言15

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