【不足しがちな栄養素】カリウム、食物繊維、亜鉛などの栄養素について知ろう

【不足しがちな栄養素】カリウム、食物繊維、亜鉛などの栄養素について知ろう

栄養バランス、栄養たっぷり……とは言うけれど、栄養素のこと、実はよく知らなかったりする。どんな食材にどんな栄養素が含まれているのか?それは体にどんな影響を与えるのか?まずは知っていると便利な医食同源の基本をご紹介しよう。

34種類の栄養素の役割、不調との関係、必要な摂取量、含まれる食品を学ぼう

同志社大学大学院生命医科学研究科教授で医学博士の市川寛先生は、入院中や自宅療養中、通院治療中の患者さんの病状・病態に対応した栄養指導や食生活の管理について、管理栄養士をめざす人向けに指導書を執筆した経験がある、栄養や食生活に造詣が深い医師。
「医食同源といいますが、医療現場では、食事の指導や管理がとても重視されるようになりました。病気の種類や病態にあわせ、医師、看護師、管理栄養士が、きめ細かい『栄養ケア』をすることで、いい結果が得られ、病後の患者さんが食生活を見直し、健康を維持できることに、貢献できていると思います。このノウハウを病気の予防やアンチエイジングにも、ぜひ役立てていただきたいですね」と話す市川先生のご意見を伺いながら、人体に欠かせない日本人の食事摂取基準(※)を34種類の栄養素のうち、14種類についてまとめていく。

【カルシウム】

日本人の食事摂取基準(※)

カルシウムを多く含む食品

干しえび、牛乳、水菜、生揚げ、ワカサギ、チーズ

カルシウムとは?

骨や歯の形成に欠かせないミネラル。細胞、筋肉、神経の働きをサポートする。ナトリウムを排泄して高血圧を予防する。牛乳・乳製品は吸収率が50%と高い。

カルシウムと体のトラブル

カルシウムが過剰になると、尿路結石などを起こしやすく、不足すると骨粗鬆症や、骨折の原因にもなる。慢性的なカルシウム不足で腰痛やイライラなど神経過敏になったりすることもある。

【鉄】

日本人の食事摂取基準(※)

鉄を多く含む食品

豚レバー、ひじき、がんもどき、菜の花、小松菜、アサリ

鉄とは?

赤血球のヘモグロビンや筋肉中のタンパク質を構成するミネラルで、体内に約4gも存在している。酵素の構成要素でもあり、エネルギー代謝にも関係する。

鉄と体のトラブル

サプリメントなどで過剰に摂取すると鉄沈着症などを起こすが、食事で摂り過ぎた分は排泄される。不足すると鉄欠乏性貧血、疲れ、頭痛、動悸、食欲不振などを起こす。

【リン】

日本人の食事摂取基準(※)

リンを多く含む食品

ドジョウ、ワカサギ、ししゃも、いわし丸干し、高野豆腐、大豆、チーズ、ヨーグルト、牛乳

リンとは?

カルシウムとともに骨や歯を形成し、エネルギーを蓄え、ATPというエネルギーを発生する物質の構成成分でもある。

リンと体のトラブル

過剰になると腎機能の低下やカルシウムが過剰に血中に放出される。不足すると骨や歯がもろくなる。

【マグネシウム】

日本人の食事摂取基準(※)

マグネシウムを多く含む食品

アーモンド、カシューナッツ、大豆、干しひじき、玄米

マグネシウムとは?

約60%が骨に存在している。体内に20~25gも含まれ、ミネラルバランスをコントロールする。酵素の働きを助け、エネルギー産生をサポートする。血管を拡張し、神経の興奮を抑える働きも持つ。

マグネシウムと体のトラブル

過剰に摂取すると下痢を起こす。不足すると不整脈などの虚血性心疾患を起こしやすくなる。

【ナトリウム】

日本人の食事摂取基準(※)

ナトリウムを多く含む食品

即席中華麵、カップ麵、いわし丸干し、梅干し、さきいか、辛子明太子

ナトリウムとは?

細胞外液に存在し、水分や血液循環の量をコントロールする。細胞内のナトリウムが外に排出され、細胞外のカリウムが細胞内に取り込まれる「ナトリウム・カリウムポンプ」で体内のミネラルバランスを一定に保っている。

ナトリウムと体のトラブル

過剰に摂取すると高血圧やむくみ、胃がんなども引き起こすと言われている。不足することは通常の食生活ではまずない。利尿剤などで大量に排泄されると倦怠感、食欲不振が起きる。

【カリウム】

日本人の食事摂取基準(※)

カリウムを多く含む食品

刻み昆布、大豆、アボカド、いんげん豆、里芋

カリウムとは?

細胞内の活動をバックアップして、水分を保持し、細胞内の酵素反応を調節する。血圧を下げる働きを持つ。

カリウムと体のトラブル

過剰なカリウムを尿から排泄できない場合に、高カリウム血症を起こす。不足すると食欲不振、脱力感などを感じるが、普通の食事で欠乏することはまれである。

【銅】

日本人の食事摂取基準(※)

銅を多く含む食品

レバー、貝類、イカ、豆類

銅とは?

赤血球のヘモグロビンを作るのに不可欠な成分。鉄の吸収を促進し、SODの酵素中に認められる金属。不足すると貧血になりやすく、毛髪にも異常が生じる。子供の欠乏は成長障害を起こす可能性もある。

銅と体のトラブル

銅が欠乏すると貧血を起こしやすくなり、薄毛、抜け毛が起こることも。骨の異常や、白血球の減少、子供は成長障害などを起こすリスクが高まる。

【ヨウ素】

日本人の食事摂取基準(※)

ヨウ素を多く含む食品

海藻類、魚介類

ヨウ素とは?

全身の基礎代謝を促進したり、成長を促す甲状腺ホルモンの成分。幼児期の成長に欠かせないホルモン。

ヨウ素と体のトラブル

摂り過ぎると甲状腺ホルモンの合成ができなくなり、甲状腺が肥大する。不足すると甲状腺の機能が低下する。

【マンガン】

日本人の食事摂取基準(※)

マンガンを多く含む食品

茶葉、種・実、穀類、豆類

マンガンとは?

骨の発育に重要なミネラルで、糖・脂質・タンパク質の代謝に関わる酵素の成分でもある。

マンガンと体のトラブル

広く植物性の食品に含まれているため、不足することはまれだが、骨の発育不良、生殖能力の低下が見られる。

撮影/久間昌史

【セレン】

日本人の食事摂取基準(※)

セレンを多く含む食品

魚介類、長ネギ、貝類、魚類

セレンとは?

過酸化物質を分解する酵素の主成分になる微量のミネラル。細胞の酸化を防ぐといわれる。

セレンと体のトラブル

過剰に摂取すると脱毛、爪の変形、嘔吐、下痢などを起こし、欠乏すると心臓病を起こすことがまれにある。

【亜鉛】

日本人の食事摂取基準(※)

亜鉛を多く含む食品

カキ、牛肉、レバー、うなぎ、カニ、小麦胚芽、納豆

亜鉛とは?

DNAやタンパク質の合成、糖代謝、インスリンの合成、免疫反応に関係している重要なミネラル。舌の表面についた味蕾という細胞の形成に不可欠。

亜鉛と体のトラブル

普通の生活で過剰になることはない。亜鉛が不足すると子供は成長障害、大人は味覚障害を起こしやすくなる。

【クロム】

日本人の食事摂取基準(※)

クロムを多く含む食品

豚ヒレ肉、豚ロース肉、アサリ、海藻類

クロムとは?

インスリンを活性化して、糖の代謝を活発にするほか、脂質の代謝にも関係する。

クロムと体のトラブル

体内に存在する量が2mgと非常に微量なため、不足することはなく、過剰に摂ると呼吸器障害が見られるという。

【モリブデン】

日本人の食事摂取基準(※)

モリブデンを多く含む食品

落花生、そら豆、レバー、枝豆

モリブデンとは?

尿酸を作るために必要な成分。極少量でも尿酸を作るのに必要不可欠である。

モリブデンと体のトラブル

食事の過不足でモリブデンが不足することは少ない。まれに過剰になると高尿酸値、不足するとがんのリスクが高まる。

【食物繊維】

日本人の食事摂取基準(※)

食物繊維を多く含む食品

いんげん豆、干し柿、押し麦、おから、ごぼう

食物繊維とは?

ヒトの持つ消化酵素では消化できない成分が食物繊維で、水に溶けない不溶性と、水に溶ける水溶性がある。食物繊維は腸の働きを活発にして、腸内の有害物質の排出を促進するほか、便秘なども改善するといわれる。

食物繊維と体のトラブル

不溶性の食物繊維は腸を刺激して腸の動きを活発にする。水溶性食物繊維はコレステロールや糖質の吸収を妨げるが、過剰に摂ると下痢やカルシウム、ミネラル、亜鉛などの吸収を妨げる。

(※)健康な個人、または集団を対象として、国民の健康の維持・増進・生活習慣の予防によって生じるエネルギー及び栄養素欠乏症の摂取量の基準を示すもの。栄養素の摂取不足によって生じるエネルギー及び栄養素欠乏症の予防に留まらず、過剰摂取による健康障害の予防、生活習慣の一次予防も目的とする。

教えてくれたのは
同志社大学生命医科学部 医生命システム学科教授 医学博士
市川寛先生
1984年京都府立医科大学卒業後、同大学附属病院第一内科研修医、’86年舞鶴赤十字病院内科医員、’88年京都府立医科大学附属病院第一内科修練医、’89年より国立舞鶴病院、松本病院、武田病院消化器内科医長。’94年より米国ルイジアナ州立大学メディカルセンター研究員、’97年六地蔵総合病院医員、医長、副院長などを経て、2001年より京都府立洛東病院内科第一副医長、’03年京都府立大学人間環境学部食保健学科准教授、’09年より現職。専門は消化器内科学。

取材・文/宇山恵子
2010年7月号「HBR」より

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