【低インスリンって?】炭水化物 抜く、抜かない?ダイエットに効果的なのはどっちか

【低インスリンって?】炭水化物 抜く、抜かない?ダイエットに効果的なのはどっちか

私たちはつい『○○だけダイエット』や『○○抜きダイエット』というものに走りがち。それは、やはり簡単・手軽だから。しかし、ラクをして成功するほどダイエットは甘くない。ダイエットのしくみを、東京医科歯科大臨床教授の宮崎滋先生と料理研究家今泉さんに伺った。

『炭水化物抜きはやせる』の根拠はどこから?

数あるダイエット法の中で多くの女性が実践している『炭水化物抜きダイエット』。過去5年間にダイエットをしたことがある人は74・6%。そのうちの約4割が『炭水化物を抜く』、または『炭水化物を控える』ダイエットをしていたことがわかった。なぜこうも低炭水化物ダイエットが支持されるのか、また、その問題点についても探ってみた。

低炭水化物(低GI)ダイエットは、考案したアトキンス博士の名前をとって『アトキンスダイエット』、ほかに『ローカーボダイエット』『低インスリンダイエット』といった名称で呼ばれている。低インスリン食というのは、そもそも糖尿病の治療法として提唱された概念。血糖値を急上昇させないために、なるべくGI(グリセミックインデックス)値の低い食品をとるようにしようというものだ。炭水化物の摂取量を非常に少なくし、糖分の代わりに脂肪がエネルギーとして使われる状態に誘導しようとしたこのダイエット法は、アメリカや日本で一時期ブームになった。
一方、最近は『糖質を控えるだけではやせない』とする専門家の声が目立つ。無理な食事制限で糖質が不足すると、疲労感や思考力の低下を招くだけでなく、筋肉量の低下が進んだ結果、代謝を低下させてしまうことは前述の通り。それでも、世の中の『炭水化物=太る』というイメージは、未だ拭い切れていないようだ。
ちなみに、低炭水化物ダイエット考案者のアトキンス博士のその後だが・・・・・・。低炭水化物ダイエットブームの中、2003年死亡。そのとき、心臓病で肥満だったことが伝えられ、『低炭水化物ダイエット』ブームは、徐々に下火になっていった。

低インスリンでも高エネルギーならやせない

低炭水化物(低GI)ダイエットについて「GI値は、糖尿病の人が血糖コントロールの指標とするにはよいでしょう。しかし、一般の人のダイエットに当てはめるには無理がある」と話すのは、メタボ治療の専門家、宮崎滋先生。
GI値の高い食品といえばご飯やパン、ジャガイモやニンジンなどがあげられ、低炭水化物ダイエットでは、砂糖や白米やパンなどの精製された穀物を要注意食品としている。問題は、「脂肪が比較的低インスリンに分類されてしまうこと。脂肪が多く高カロリーの肉や牛乳、チーズなどの乳製品がGI値が低いためにおすすめ食になってしまう。どんなに低インスリン食でも、高エネルギーのものをたくさんとれば太ります。何度も言いますが、ダイエットで頼りにすべき指標は『カロリー』。総量規制抜きにダイエットは語れません」(宮崎先生)
一方、女子栄養大学の栄養クリニックで食事指導にあたっている栄養士の今泉久美さんは、「GI値だけでやせようとするのは、短期集中ではよくても一生は続かない」と話す。「正しいダイエットという意味では、食品は食べ過ぎてはいけないものと、たっぷり食べたほうがよいものに分かれるだけで、基本的に食べてはいけないものはありません。大事なのは食べ方で、炭水化物は、タンパク質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどと一緒にとることで、血糖値の上がり方をゆるやかにできます。糖質抜き、あるいは油抜き、逆にタンパク質過剰になっても、消化吸収の面で体に負担がかかります」
GI値でいうと根菜類は血糖値が上がりやすいとされるが、一方で「野菜は、ビタミンやカロテンが豊富、歯ごたえがよく献立にメリハリがつくなど、色々な力を持っています。旬の野菜なら安く手に入るというメリットも。ニンジンの甘みをいかしてきんぴらをつくれば、砂糖やみりんなどの調味料を減らせるという考え方もできます」(今泉さん)

炭水化物と脂肪をどちらもバランスよく減らす

低脂肪食と低炭水化物食では、どちらが痩せやすいのか、という論争についてはどうだろう。
「もともとは、一日1200キロカロリーと制限した上で、脂肪と炭水化物のどちらを減らしたほうがよいのか、という実験が行われたことがはじまり。結果は、どうも炭水化物を減らしたほうが効率がよいということになり、糖質を減らしたほうが痩せるということばかりが強調されてしまいました。しかし、糖質をいくら減らしても、脂肪をたくさんとれば太ります。例えば、脂身の多い肉と比較すれば、ご飯一膳分で減らせるカロリーなど知れていると思いませんか?」と宮崎先生。
以上をふまえて、ダイエットの理想食とは?宮崎先生も、今泉さんも、推奨するのは日本食。
「米は、植物性のタンパク質が豊富。塩分を取りすぎないよう気をつければ、主食、主菜、副菜と、献立自体がバランスよく作られる和食こそダイエットにおける理想食です」と宮崎先生。
宮崎先生によれば、大前提として、三大栄養素はどれも人間に欠かせない要素。「通常の食事での平均割合は、炭水化物60%、タンパク質15%、脂肪25%といったところ。このうちダイエット中も減らしてはいけないのが、骨や筋肉、内臓を作るタンパク質で、一日最低でも70gはとりたいですね。残りの要素である炭水化物と脂肪から減らしていくわけですが、残りのカロリーの内訳が脂肪1、炭水化物2くらいの割合になるようにとるのが一般的。どちらかを一切カットする食事はやめましょう。こうして大まかにバランスをとりながら、献立を考えます」

献立作りに役立つ適量の量り方

タンパク質(魚、豆、豆製品)は『こぶし1つ分』
一日の必要量は240kcal/3点。一食80kcal/1点。
一食分の肉、魚、豆・豆製品は、こぶし1つ分と覚えると簡単。

野菜は『両手に1杯』
一日の必要量は350g以上。一食分は120g。
生野菜両手に一杯分で約120~150gと覚える。

※30代女性で一日の摂取エネルギー量1600kcalの場合 監修:今泉久美さん

一日2食はご飯が理想

今泉さんは、一日3食のうち、2食はお米を食べることを推奨。「パンや麺類を食べてもよいのですが、塩分や脂肪をとりすぎるので目安は一日1食まで。特に、市販のパンは、動脈硬化を招くトランス脂肪酸が使われていることが多いのも問題。栄養クリニックの生徒で、主食はパンだけという女性がいました。見た目はガリガリにやせているのに、中性脂肪やコレステロール値が高い。健康上、問題があるということで、3ヵ月間パン食を控えたところ、あっという間に正常値に戻りました」
ダイエット中は、「ご飯の量を減らしてもOK。ただし、最低100g/一食(栄養クリニックでは120gを推奨)は食べてほしい。理由は、ご飯を食べないと、結局ほかのものを食べ過ぎてしまうから。菓子パンでランチを済ませてしまうと、夜にお腹がすいてしまってドカッと食べてしまうでしょう?」と今泉さん。
栄養バランスを崩さないよう食べるために、一日の適量を知ることもポイント(上記参照)。
「スーパーでは、肉1点、魚1点、野菜は旬のものを何種類か、あとは乳製品、卵、乾物売り場で必要なものを買って、その中で一日の献立を考えるといいですよと、栄養クリニックでは話しています。きちんと食べているほうが、太りにくいしハードな仕事も乗り切れます。ダイエット中でも、食事は、元気に生きるエネルギーを得るためのものという考えは持っていたいですよね」
なかなかやせないと嘆くあなたの食生活は、案外、高脂肪&低炭水化物食になっているかも。これを機に、一度食事の内容を見直してみるといいかもしれない。


教えてくれたのは・・・
宮崎滋先生 公益財団法人 結核予防会、総合検診推進センター所長、東京医科歯科大 臨床教授
東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。同大第一内科、東京逓信病院内科部長兼副院長を経て現職。専門は、肥満症、糖尿病治療。「健康診断で中性脂肪値が高めの人が読む本」(幻冬舎)、「メタボリックシンドローム教室―Q&Aでわかる療養指導」(中外医学社)など、ダイエット、メタボリックシンドローム関連の著書も多数。

今泉久美さん 料理研究家 栄養士
女子栄養大学栄養学部卒業後、食品メーカーに入社。退社後、日本テレビ「キユーピー3分クッキング」のアシスタント、料理家のアシスタントを経て、1995年に独立。2004年から、女子栄養大学栄養クリニックのヘルシーダイエットコースの料理指導を行っている。現在は、テレビ、雑誌、料理本、全国各地での料理教室、講演会などで、幅広く活動中。

取材・文/及川夕子

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