肌がくすむ、硬くなる、それは糖化が原因【皮膚老化と糖化】

肌がくすむ、硬くなる、それは糖化が原因【皮膚老化と糖化】

若々しく美しい肌は、表皮の角質細胞も、真皮のコラーゲン線維やエラスチン線維も、規則正しく整然と並んでいるが、老化が進むと構造が崩れてハリや弾力が失われる。今回は、肌の老化に関係し、美肌に欠かせないタンパク質を硬く黒く変性させる“糖化反応”について、同志社大学生命医科学部教授の米井先生に聞いた。

肌弾力を保つコラーゲンが焦げて固まる!

無色透明の砂糖水を煮詰めていくと、とろとろのアメ色になって、最後には茶色く固まってしまう。「これが甘くて香ばしいカラメルですが、私たちの体内でカラメルができてしまうのが糖化。皮膚で糖化が進むと、糖がコラーゲンに絡みついて、カラメルのようにカチカチに固まってしまい、肌のハリを保っているコラーゲン線維が変性して、弾力性を失い、色も黒ずんで、肌老化が進んでしまうのです」と説明するのは同志社大学教授の米井嘉一先生。

一般的に肌老化の原因には紫外線、乾燥、酸化の3つが挙げられる。そしてもうひとつ、私たちの体にとって欠かせないエネルギー源である糖によってタンパク質が変性を起こす糖化も、肌老化の大きな原因のひとつだ。

糖化は真皮層で肌のハリを保つコラーゲン線維を破壊する。真皮層は約0.2㎜の薄い表皮の下にある2.0~3.0㎜の層で、コラーゲン線維とエラスチン線維、そしてヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの細胞と細胞をつなぐ物質でできており、皮膚に弾力性とハリ、そして重力に負けずにたるまない強さを与えている。真皮層の約70%をコラーゲンが占める。その大切なコラーゲンを破壊してしまうのが糖化という生体反応なのだ。

糖化反応の老廃物AGEsも肌を老化させる

「糖尿病が進行すると肌はハリを失い、たるんで黒ずんでしまいます。これは糖尿病の人の体内で、余分な糖が糖化反応を起こし、肌も老化させているからです」と米井先生。

実はタンパク質に糖が絡みつく糖化が進む過程では、酸化、脱水などの反応が繰り返される。するとその反応でAGEs(糖化最終生成物)と呼ばれるゴミのような老廃物も発生し、加齢によってAGEs代謝処理が遅くなると、肌の透明感が失われ、くすみや黒ずみの原因になる。「糖尿病患者の皮膚コラーゲンには、健常者と比べて明らかにたくさんAGEsが存在しており、これが肌老化を早めていると推測されます」と米井先生は説明する。

AGEsとは?

AGEsとは、Advanced Glycation End Products=糖化最終生成物のこと。体内で糖(グルコース)は、タンパク質などの物質と結びついて糖化(メイラード)反応を起こす。その結果、固くて茶色い、分解されにくい老廃物であるAGEsという物質が発生する。肉や魚のコゲなどが体に悪いと言われるのは、実はこれらがAGEsであるからだ。

加齢に伴いAGEsは蓄積され、細胞に様々な悪影響を及ぼし、老化の原因の一つと考えられる。しかし、糖はヒトのエネルギー源として不可欠な存在なので、AGEsの発生は避けられない。皮膚や血管を硬くさせたり、糖尿病合併症、アルツハイマー病などに糖化とAGEsが関係していると言われる。逆にカロリー制限して、低カロリーで生活すると老化が遅くなるということにもAGEsの発現抑制効果が関係していると推測される。

AGEsが多い食品は脂肪、少ないのは食物繊維

2004年8月の“Journal of the American Dietic Association”で発表された内容によると、AGEsは、食品を摂取することで体内で発生するが、もっとも多くAGEsが発生するのが脂肪、少ないのが食物繊維だった。また煮る、焼くなどの調理法、調理時間、調理温度でもAGEsの発生する量が異なることがわかった。

糖化を抑制する4つのハーブとは?

米井先生の研究室ではAGEsリーダーという計測機器で皮膚・皮下の血管壁に蓄積されるAGEsの量を測定し、さまざまな研究を進めている。AGEsは糖尿病、心疾患、腎臓病、認知症などとの関連が示唆されているので、これらの病気の予防や治療にも役立つ可能性がある。また、糖化反応を起こさないようにする食品や化粧品の開発、抗糖化に効果的な運動法や食事法なども研究が進められている。

「我々の研究でも、ローマンカモミール、ドクダミ、西洋サンザシ、ブドウ葉の混合ハーブエキスが、糖尿病予備軍のAGEsを低下させたことを確認しました」と米井先生。

食後血糖値が200㎎/dl以上は要注意

抗糖化の基本は、血糖値を急激に上げないこと。もちろん肌を糖化から守るのも、同じことだ。

「空腹時血糖やヘモグロビンA1cが正常でも、安心しないでください。大切なのは、最も血糖が急激に上昇しやすい食後の血糖値を200㎎/dl未満に抑えることです」と米井先生。最近では自宅で測定できる簡易式の血糖値測定器もあるので、ぜひ一度、食後血糖値を測定してみよう。

血糖値を急上昇させないためには、食べ物の選び方や食べ方にも工夫が必要だ。「血糖値を緩やかに上昇させる低GI食品を選ぶこと、ゆっくりよく嚙んで食べること、空腹時や運動後に甘いお菓子やジュースを摂らないこと、そして腹八分目を心がけることが大切です」(米井先生)。

肌の糖化によるシワ、たるみ、くすみ、黒ずみに負けないためには、体を焦がし、肌をカチカチに硬くする、甘くておいしい“糖の誘惑”に負けないよう、日頃から十分注意する必要があるのだ。

教えてくれたのは・・・・・・
同志社大学生命医科学部教授
米井嘉一(よねい・よしかず)先生

1958年東京生まれ、'82年慶應義塾大学医学部卒業後、UCLA留学、日本鋼管病院内科人間ドック脳ドック室長、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授などを経て'08年より現職。加齢と疾病との相関関係の解明をはじめ、老化度の診断や治療法の開発、抗加齢医学に基づいた、サプリメント、健康食品、理学療法機器などの臨床試験も行う。近著に『早く老ける人、老けない人』(PHP研究所)。

取材・文/宇山恵子
2010年4月号「HBR」より

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